簿記1級の取得を検討しているんだけど、「簿記1級は意味ない」という意見があって迷ってる。
「日商簿記1級は意味ない」って風評は言葉足らずな気がするな。
簿記1級の取得を検討している段階で、「日商簿記1級は意味ない」という風評を知り、取得を思いとどまっている方も多いでしょう。
実際に私も、簿記1級に挑戦する前、そのような否定的な評価があることを知り、挑戦しようか迷っていました。
簿記1級は「会計のスペシャリスト」として知られる資格にもかかわらず、なぜそのような否定的な評価があるのでしょうか。
私の経験を交えながら、深堀していきたいと思います。
日商簿記1級は意味ないと言われる理由
簿記の幅広い知識とスキルが身につく日商簿記1級が「意味ない」と言われる理由は、主に以下の3点です。
- 独占業務がない
- 難しすぎる
- 中小企業ではオーバースペック
日商簿記1級は独占業務がない
税理士は『税務の代行』や『税務相談』、公認会計士は『監査』を独占業務として取り扱うことができます。
独占業務があることで、転職市場における市場価値が高まるだけでなく、将来的に独立開業を目指すことも可能です。
しかし、簿記1級にはこのような法的に規制された業務が存在しないため、単なる知識の証明にしかなりません。
そのため、「取得しても意味がない」と言われているのです。
日商簿記1級は難しすぎる
簿記1級の合格率は、約10%で推移しており、非常に難関です。
簿記1級の難易度が高い理由は、2級や3級と比べてより深い知識を必要とすることと、出題範囲の広さです。
さらに、簿記1級に合格するには、4科目全体で70%以上を正解する必要があり、1科目ごとに40%以上の正答率が必須です。
つまり、苦手科目を作らないようにバランスよく勉強しなければならないということです。
これらの厳しい条件が、簿記1級の難易度を押し上げている原因になっています。
簿記1級の合格に必要な勉強時間は、500~1,000時間程度と言われておりますが、私は3000時間かかりました。
勉強時間には個人差がありますが、簿記1級の難易度が2級・3級と比較してはるかに高いです。
日商簿記1級は中小企業でオーバースペックになりやすい
簿記1級の出題範囲は、組織再編や連結会計など、大企業が行う会計処理がメインです。
しかも、かなりマニアックな問題も出題されるため、中小企業の経理では必要ない知識も多く含まれています。
中小企業では、簿記2級程度の知識でも十分であり、簿記1級ほどの能力はほとんど必要とされないため、オーバースペックと見なされることがあります。
資格自体に価値があっても、実務で求められていなければ「意味がない」ということだね。
以上の理由から、日商簿記1級自体は無意味ではないものの、それだけでは実務での活用やアピール力に直結しづらいという側面が、否定的な意見につながっているようです。
簿記1級を取得した方がいい人
経理関係で働いている人
経理部や財務部、税理士事務所などの経理関係の仕事をしている人にとっては、簿記1級の勉強がキャリアアップに繋がります。
簿記1級はこんな時に役立つ
- 部下に教える際にも論理立てて説明が可能
- 税理士事務所では、顧問先の経理担当者に会計処理について説明を求められることが多いのですが、納得してもらえる説明ができる
- 簿記1級で身につける工業簿記や原価計算の知識は、製品メーカーなどの経理として高く評価される
簿記1級は、仕訳や財務諸表の作成以外にも会計理論や会計基準が出題範囲に含まれるため、人に教えることも上手くなります。
「教えることが上手い」ということは信頼を獲得しやすいということです。
細かなポイントを質問されても回答できる知識があれば、将来的には経理部長だって狙うことができます。
また、工業簿記や原価計算が主要な会計手法として活用されているメーカーなら、実務的な応用力が高い簿記1級取得者が重宝されることは間違いありません。
簿記1級合格者は、他人に説明できる知識レベルだから信頼を得やすいんだね。
経理関係の仕事をされている方なら、簿記1級で勉強したことがかなり活きてくるはずだよ。
年齢が若い人
大学生が在学中に簿記1級を取得すれば、就職活動で有利になり、大企業を目指すことも可能です。
大学入試で簿記資格取得者を優遇している大学は多く、簿記1級を取得していれば推薦入試で大きなメリットを得られます。
例えば、会計学の名門である一橋大学や中央大学などの有名な大学も、簿記1級を保有していると推薦入試で有利に働きます。
また、大学生でなくとも、20代のうちであれば、簿記1級を取得しておくことで、転職に活かすことができます。
公認会計士や税理士、中小企業診断士や米国公認会計士など上位の資格にチャレンジすることもできるので、人生の選択肢も広げられることは間違いありません。
簿記が好きな人
一般的に資格試験の勉強を大変だと感じる人が多いですが、簿記の勉強が楽しい人もいます。
私も、総合問題で、貸借がピッタリ一致した時は、達成感を感じていました。
工業簿記なんかは、いったん閃くことができれば、気持ちよく全問正解することもあるので、理論理屈で覚えるのが好きな方には楽しく感じるでしょう。
簿記が「楽しい」と思えたら、もう日商簿記1級に合格したようなものです。
また、企業の財務諸表を読めるようになる、経済ニュースを深く理解できるなど、楽しみを感じるポイントは多くあります。
私は、簿記1級に合格した後、もっと会計が好きになり、毎朝財務分析をしているほどです。
簿記に楽しみを感じないのであれば、簿記1級を選ぶよりも、行政書士や社会保険労務士など、独立も目指せる資格の取得をした方がいいかもしれません。
会計士や税理士を目指している人
公認会計士を目指している方は、まずスモールステップで日商簿記1級を受験するのがお勧めです。
会計士の適性を測るために、まずは登竜門である簿記1級を受けて、簿記の向き不向きを判断をすることができるためです。
会計士は下手したら10年以上かかってしまう恐れのある難関資格なので、会計士に落ちた時の『保険』として受験される方も多いです。
また、税理士を目指している方も、日商簿記1級を取得することが税理士への近道となります。
税理士は、誰でも受験できるというわけではなく、以下の受験資格が設定されています。
税理士の受験資格
学識による受験資格
- 大学又は短大の卒業者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した人
- 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した人
- 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した人
- 司法試験合格者
- 公認会計士試験の短答式試験に合格した人
資格による受験資格
- 日商簿記検定1級合格者
- 全経簿記検定上級合格者
職歴による受験資格
- 法人又は事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した人
- 銀行・信託会社・保険会社等において、資金の貸付・運用に関する事務に2年以上従事した人
- 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した人
この受験資格から分かるように、大学に行っておらず、金融関係での職務経験のない人にとって、日商簿記1級や全経簿記上級を取得するのが税理士への近道となるのです。
ただし、令和5年4月1日から、簿記論と財務諸表論の受験資格は撤廃され、誰でも受験可能となりました。
会社が簿記1級を評価してくれる人
所属している会社が資格の取得を評価してくれるのであれば、簿記1級を取得する意味があります。
基本的に簿記1級は、大企業で評価される傾向にあります。
資格手当や昇給の条件などに簿記1級があれば、簿記1級はコストパフォーマンスが高い資格に変化するでしょう。
実際に東証プライム市場に上場している企業の求人には、簿記1級を取得していることが応募条件となっているケースもあります。
求人条件に簿記1級と記載されている会社は、難易度に見合った評価をしてくれる可能性が高いです。
ただし、税理士法人の場合、簿記1級よりも簿記論を取得した方が優遇される場合が多いので、その場合は、簿記論を取得した方が良いでしょう。
【簿記1級】の転職・求人・中途採用情報│doda(デューダ)
学歴がない/学歴コンプレックスがある人
学歴にコンプレックスがある方は、難易度の高い資格を取得してコンプレックスの解消をするのもお勧めです。
私も学歴コンプレックスを解消するために、日商簿記1級を取得しました。
簿記1級は、数ある資格の中でも、『認知度』『権威性』ともにトップクラスです。
難易度は高いですが、取得できれば「優秀な人」というレッテルを張られるでしょう。
私は取得してから、周りからの見られ方が一気に変わりました。
もし、あなたに学歴コンプレックスがあるなら、日商簿記1級を目指してみてはいかがでしょうか?
あとちょっとで日商簿記1級に合格できる!という人は諦めないで
日商簿記1級に何度も不合格になっているけど、「あと一息の所で合格点まで達しない」という人は、合格まで続けた方がいいです。
私は、3回目の受験で68点というところで不合格になりましたが、4回目の受験で合格できました。
対して、私の知り合いに「3回受験したけど、あと一息の所で不合格」になって諦めてしまった方がいます。
それは本当にもったいないことです。
まとめ:「日商簿記1級は意味ない」という風評は言葉足らずに過ぎない
「日商簿記1級は意味ない」という風評は、言葉足らずに過ぎません。
日商簿記1級を取得すること自体が無意味なのではなく、取得する人によっては、最大限生かすことができない場合もあるということです。
しかし、結局は自分が「取得してよかった」と思えたなら、そこに意味はあります。
私も2年間かけて簿記1級を取得しましたが、後悔したことは1度もありません。
「日商簿記1級を絶対に取りたい!」と思ったなら、悪い風評に惑わされないで、目指すべきだと思います。
私はあなたの日商簿記1級合格を心より応援しております。
最後までご覧いただきありがとうございます!
コメント